2013年10月

2013年10月04日

 昨日、谷町9丁目でライブがありました。見てくれたかたがた、どうもありがとう。共演は香川県から来られていた小野シンさん、同い年の山田孝典さん。小野さんの「みんな閉じられた本の中で歌っている」という歌詞や、山田さんの「宙へ、宇宙へ、宇宙、遊泳ー」と歌う姿が印象に残った。記憶違いだったら申し訳ないです。
 日が明け暮れ、どんな言葉にもできない凄惨な夢を見たあと僕は近所の歯医者さんへ行った。2ヶ月もの間この暮らしを悩まし続けた歯の痛みとお別れするためだ、インターネットで場所を把握、加えて携帯のカメラで地図の画像を撮っておいた。にもかかわらず場所わからず、携帯探す、ポケットに携帯なし、いざ団地妻に道聞きぬ、小児の母「その四つ角を右に曲がりて、実直に、左方に歯科医院あり」、しかし場所分からない、歯医者なし、しばらくあたりを徘徊した後に「北へ150メートル」と書かれた看板を発見、指示に従い、やっとたどり着く。
 1時間待つ、長田弘の「詩は友人を数える方法」を読み進める。 彼は北アメリカ大陸を旅しながら、その広大な風景を見、読み、考え、文章を紡ぎながらアメリカ人の詩を、無名の生活者たちの沈黙を引用しようと試みる。バルチモア、ナッシュビル、テネシー、ジョージア・・・・昨日のライブで、僕の歌を聴いてくれた人が僕のルーツを尋ねた。(「君はどんな音楽が好きなの?こんな音楽が好きじゃない?」という疑り深く、時に思い切って取り交わされるこんなやり取りは、ライブに慣れていない僕にはすごく刺激的だ)その時にアメリカ、ネオアメリカン、尾崎豊という名前が飛び出した。アメリカ、ネオアメリカン、尾崎豊・・・自分が影響を受けてきたものの名前を取り出してみるが、ただちにはそれらと結びつかない、しかしよく考えてみると自分の好きな音楽家たちの多くはアメリカにルーツを持っていることに気付く。尾崎豊は、ジャクソンブラウンが好きだったみたいだ。それにホイットマン、ポー、ジャズ、ゴスペル。そうか、そうなのか。

 ところで虫歯に悩まされ、歯医者に通う時間がないあなたに、こんな詩を
 

 ーはげしい歯痛に耐えるために
 高等数学に熱中する初老の男のエピソードが
 「魔の山」という小説のなかにあったっけ
 そして主人公の「単純な」青年の葉巻は
 マリア・マンチーニ

 どうして葉巻の名前なんか
 ぼくはおぼえているのだ 三十三年まえに読んだドイツの翻訳小説なのに
 ぼくも歯痛をこらえながら詩を書いてきた
 歯痛に耐えるためにというべきかもしれない
  ところがぼくの詩ときたら
 高等数学とちがって 
 歯痛をかきたてるのだ 歯痛には
 いつも新鮮な味とひびきがあって
 生まれたときから何回も経験してきたくせに
 この痛みの新鮮さにいつもぼくは驚かされるー
(「夜間飛行」田村隆一)

 

(22:09)